2007年11月18日

NECマイタウンコンサートin札幌〜札響&外山啓介

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NECが主催する「マイタウンコンサート」に行ってきました。
プログラムは以下の通り。

ベートーヴェン:コリオラン「序曲」
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調
ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調「新世界より」

●アンコール
ドヴォルザーク:チェコ組曲より「ポルカ」

指揮/高関健
ピアノ/外山啓介
オーケストラ/札幌交響楽団

これは、あらかじめはがきで応募し、抽選の結果当たった人のみペアで入場できると言うイベント。メインは札幌交響楽団ですが、今回、ソリストになんと!外山啓介君がチャイコのピアノコンチェルト1番を弾く!というので、私は迷わず応募いたしました。
運良く当たってラッキー!!\(^o^)/でしたが、開演3時の前に1時から座席指定券と引き換え、万が一満席の場合は入場できない(*_*)というので、
私とびびは1時目指して会場のKitaraへ。

すでに座席指定券の引き換えるのに長蛇の列、おまけにチケット引き換えたら、Kitaraのレストランでランチしようと目論んでいたら、同じように考えている人も多かったらしく、レストランもかなり並んでいました。

座席は二階の右斜め後方、でもちょうど前から二番目でよく見えるいい位置でしたし、
レストランも約45分待ったら入れて、ちゃんと開演に間に合ったので良かったです。

こう言うときのオープニングはたいてい序曲ですよね。
で、たいてい知らない曲・・・。(爆)
コリオランも知らなかったのですが、やっぱり戯曲の始まりの曲、急激に止まったりとか、休符の使い方がすごく効果的で面白かったです。
まあ、札響は少し固い感じがしましたが。

次はついにお目当ての外山君。
出だしの壮大な和音を聴いて、ああ、やっぱりなんて音が透明なんだろう、
また春よりも一回りも二回りも成長したなあと胸がいっぱいに。
が・・・けっこう音外すのが目立っていました。^^;
あまりに有名だから、ちょっと隣の音を引っ掛けてもすごく目立つんですよね。
特に1楽章の始め、3楽章の始めとか。
う〜む、それと相変わらずの緊張屋さんなのかもしれませんが、曲の途中でもいっぱいハンカチもって額拭いて、鍵盤を何度も拭くのは
やはり視覚的によろしくないんじゃないかしら?ちょっと落ち着いて聴けなくて残念でした。
それでも見事に研ぎすまされた音と、メリハリあるリズム感は
爽快この上なしで胸がスカッとしました。
いいなあ、こういう純粋さが真っすぐに届くって本当に貴重な資質だと思います。

そうかと思えば、2楽章ではとてもまろやかな音で、空気をがらっと変えて、
ものすごく楽しそうに弾いている姿が印象的でしたね。

3楽章の凄まじい集中力(途中で何度も汗拭きはあったにせよ)は
一気に最後まで引っ張って行ってくれて、
真面目に感動しましたね。音が熱い!素晴らしい!!

外山君、さらに腕を磨いてまた演奏を聴かせてくださいね。
私もびびもいつも応援していますよ♪(^^♪

そして後半の新世界。
これ、超有名ですが、それゆえにずっと聴くことがなくて、
久々に聴きましたよ。

マジでいい曲ですね〜。と、改めて思いました。
ドヴォルザークって、いいメロディ書くなあ・・・。

2楽章の「家路」のテーマも心底しみじみしてしまいました。
オーボエのソロ最高です。涙出そうになりました。

それと余談ですが、4楽章は実はびびが昔幼稚園年長のときに、
学習発表会で合奏した曲なんです。
そう言う懐かしさも手伝って、夢中で聴き入りました。
あ、もちろん、札響の演奏も素晴らしかったです。
特に前述のオーボエを始めとする木管ですね。調和が美しく、何度もうっとり。
金管はちょっとホルンが危ないところあってひやっとしました。が、全体的にはとてもまとまっていて良かったと思います。
そう、音楽はミスが云々ではなく、いかに聴く者の心に届くかですね。

そうそう、観ていて楽しいのは、ユーフォニウム?あれ、チューバじゃないよね、
その今日のコンサートで一番大きな金管、この新世界で2楽章の最初と終わりにしか出番がないのです。(3楽章に少しあったかも^^;)
その他、ずうっと楽器床に被せて置いて、じ〜っとしているのがなんか面白かったです。
生のコンサートは、こう言うのがいろいろわかるのもホント、面白い!

万雷の拍手に応えてアンコールにやってくれたのは
やはりドヴォルザークの「チェコ組曲よりポルカ」。

はい、ここで「のだめ!!!」とわかったあなた、
さすがです!
この曲は、ちょうど一年前にテレビでやっていた「のだめカンタービレ」の第一話、
冒頭で千秋が「ヴィエラ先生、なぜぼくはここにいるのでしょうか?」のシーンで使われていた、あの曲です!!
指揮者の高関さんも「これはちょっと前のドラマで使われてかなり流行った曲です」
(「のだめ」とおっしゃらないところがかえってニクい)と紹介していました。
流麗な旋律が心洗われるようで、素敵でした。

と言うことで、これでコンサートは今年は納めになります。
本当は、先月の小山実稚恵リサイタルシリーズ〈音の旅〉ピアノでロマンを語る第4回〜幻想と現実〜[濃青紺:意志のある幻想]で終わりかと思っていたのですが、
運良く今日のが当たってしまい、とっても嬉しいコンサート納めとなりました。

posted by 乃琶 at 20:35| Comment(8) | TrackBack(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月27日

小山実稚恵リサイタルシリーズ〈音の旅〉ピアノでロマンを語る第4回〜幻想と現実〜[濃青紺:意志のある幻想]

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小山実稚恵さん、音の旅第4回に行って来ました。

会場はいつものように札幌コンサートホールKitara、プログラムは次の通り。

シューマン:クライスレリアーナ(8つの幻想曲)作品16
J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガニ短調 BWV.903
シェーンベルク:6つの小さなピアノ曲 作品19
ショパン:幻想曲ヘ短調 作品49
ラフマニノフ:ソナタ第2番変ロ短調 作品36

●アンコール

ラフマニノフ:前奏曲変ホ長調 作品23-6
ラフマニノフ:前奏曲嬰ト短調 作品32-12
ラフマニノフ:前奏曲嬰ハ短調 作品3-2

私事ですが、娘のびびが風邪を引いてずっと治らなかったり(この日もマスク着用)、そのびびのKitaraでの本番が二日後に控えていてこの日もピアノのレッスンがあったり、
午前中には私の、実に二年ぶりとなる人前演奏があったりとかで、かなり心身共に
疲れていたので、いつもよりかなり集中力が弱っていたと思います。

が、この日のテーマ色である「濃青紺」の(と言うよりも、爽やかなロイヤルブルー?)
すっきりとしたドレスを着て、またいつものようににこやかな笑みで登場した小山さんに
そんなストレスもすうっと癒されて行きました。

クライスレリアーナが始まると、その安定感にこちらも心底安堵。しかし、この私にはつかみ所のない(^_^;)幻想曲たちに、徐々に心はかき乱されたり、かと思えばホッとしたり・・・。
気がつくとすっかり小山さんのピアノに引き込まれていたのですね。

相変わらず力強いタッチの迫力も去ることながら、弱い音のしっかりとした存在感が
この日はとても印象深かったです。

終曲の、交響曲1番「春」に通ずるテーマは、以前からものすごく好きなのですが、
その情熱的な語りかけと、相反するパラッパラッという、途切れがちなテーマの冷たさ、と言うよりも行く先が見えない不安げな表情の対比が実に巧み。わ〜っと感動しているうちにすっと終わってしまうんですが。^^;

さて、バッハのクロマティックファンタジー(半音階的幻想曲とフーガ)です。
もちろん、この日の目玉と言うか、圧巻はラストのラフマニノフのソナタではありましたが、私的にはこのクロマティックファンタジーがダントツに良かったです。
目まぐるしく展開される半音階の移り変わりを、小山さんは実にスピーディに魅せてくれます。
目から鱗でした。そうか、半音階ってこんなに魅力的だったのですね。まさにしっかりとしたテクニックがあってこそのスピードと、音楽のしっかりとした構築力。半音階の一つ一つが生命力に溢れ、輝いていました。

そして後半のフーガ。後で小山さんの解説を読んで同じようなことが書かれていてビックリしたのですが、
その音といい、音楽の流れの作り方といい、私はカテドラルの中でパイプオルガンを聴いているような気持ちにずうっとなっていました。
とてもとても厳かで、穏やかで心鎮まる演奏に、私はいつの間にか涙が出ていました。

後半はまずシェーンベルク。大変短い曲の集まりですが、それぞれがものすごくぎゅっと凝縮された個性の塊。とくに、最後の曲は、遠くで聴こえて来る鐘の音の様で、大変に美しかったです。

そうそう、この日のプログラムは鐘の音を随分聴いたような・・・。(^^ゞ

ショパンの幻想曲へ短調は、もうもう、すべて手のうちに入っていると言う、小山さんの貫禄充分の演奏でした。
音楽の隅々まで神経が行き届いて、音のすべてに抜群のコントロールがされていて、それがちっともわざとらしくない。ショパンと言う音楽の美しさを久々に肩肘張らずに堪能できました。

そして最後のラフマです。
これはもう、息をもつかせぬド迫力で一気にフィナーレへ!
というのが、すべてですね。^^;
前回の展覧会の絵でも感じたんですが、あの、上から音を出すと言うよりも、
ピアノと言う楽器の底から、湧き出て来る音の饗宴には、ただただ、感嘆するしかありません。
とにかく、Kitaraの小ホールじゃ狭すぎるのでは?と思うほどの力強い音、でも全く割れたり痛かったりするような騒音ではなく、ピアノそのものが楽しく小山さんと一緒に共鳴しているようなそんな感覚・・・。それはこの上ない幸福感でもあります。
もちろん、この曲はものすごい超絶技巧で行き交う手や、目にも留まらぬ早さの運指、
怒濤のオクターヴの強襲など、視覚的に訴える効果も抜群で、それら一つ一つも大変お見事なのですが、
やはり私はこの曲をクライマックスまで一気に持って行ってくれる小山さんの卓越した構成力に感服でした。

演奏が終わって、私は疲れも何もかも吹き飛んで自然に「ブラヴォ!」と叫んでいました。びびもまた、手のひらが真っ赤になるほど拍手をしていました。

小山さんがアンコールに応えてくれたのはこれまたラストと同じラフマニノフ。趣の異なる三曲を情感たっぷりに奏でてくれ、さらに場内は沸き立ちました。

やっぱりね〜、32-12も大好きだし良かったですが、最後の3-2、通称”鐘”には
ぞっこん参りました。私の心は遠くロシアの地まで飛んで行きましたもの。(^^)

終演後は、いつものようにサイン会です。

私は毎回、その日のプログラムにあった曲から持って行くCDを決めるのですが(これがなかなか難しい、でも楽しい)
今回は次の二枚に。



ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番



ファンタジー


もう親子で毎回登場し、何度もお話しさせていただいているので、小山さんも「ああ〜!」って私たちのことを覚えていてくださったようです。これはとても嬉しかったですね♪また、びびは28日に小山さんと同じ舞台で演奏を披露するので、
その旨を伝えると、「わ〜、頑張ってね。何を弾くの?」と小山さん。
「リュリのクラントです」とびびが答えると「へぇ〜」と、少し感心されたような?感じでにこやかにその楽譜にもサインをしてくださいました。びびには何よりの力強い励ましとなりました。

小山さん、今回もどうもありがとうございました。私、ずっこけさせるようなことを申しましてスミマセンでした。(笑)

さて、来年1月16日に小山さんは旭川でリサイタルをされます。
私たちもぜひ行けたら行きます、と言ったんですが、「雪がなんでもなければ」と言いますと、小山さんは「そうなのよね〜」とちょっと顔を曇らせて激しく同意してくださいました。
これまた私事ですが、もろもろの事情があり、私とびびは来年の1月15日過ぎまで
しばらく演奏会などに行くのはやめることになります。
16日はちょうどその明けと言うことで、そのうえ小山さんと言うことで、願ってもいない機会なのですが、なんせ季節は冬。毎年このぐらいのときに一度は猛吹雪になりますので、ちょっとそこのところだけが気がかりですね。
でも今のところは、行くつもりでいますので、5月30日に行われる「音の旅」第5回よりも前に、小山さんの素晴らしいピアノにまた出会えますことをひたすら願うこととします。(^^ゞ
posted by 乃琶 at 10:10| Comment(3) | TrackBack(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月09日

関本昌平ピアノリサイタル 2007.9.8

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びびと二人、関本昌平さんのピアノリサイタルに行って来ました。

会場は札幌コンサートホールKitara小ホール。

プログラムは次の通り。

W.A.モーツァルト:ソナタ 変ロ長調 K.281
L.v.ベートーヴェン:ソナタ第31番 変イ長調 作品110
F.ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 作品31
F.ショパン:ノクターン第13番 ハ短調 作品48-1
F.ショパン:バラード第4番 へ短調 作品52

●アンコール
シューマン:子どもの情景より「見知らぬ国より」
モシュコフスキ:火花
スクリャービン:エチュード 嬰ニ短調 作品8-12

このコンサートは、河合楽器が主催するカワイコンサートのイベントであるためか、
会場内はピアノの先生やその関係者、生徒さんと思われる小さい子とそのお母さん、などが多かったです。

関本さんは浜松国際ピアノコンクールのときに知り、その後の大活躍で
今や世界的なピニストになられていますが、やはり、一昨年のショパン国際ピノコンクールで4位に入った、その実力を生で聴いてみたいなと思っていました。

黒のエンビで颯爽と登場、にこやかに答礼すると、まずモーツァルトから。
しっかりとしたタッチで、メリハリ良く、軽快に弾き進めて行きます。
音色がとっても楽しそうで、最初の曲にありがちな堅さや緊張と言ったものは微塵も感じられませんでした。
三楽章を弾き終わると、これまたパッと立ち上がります。何と言うかこう言う立ち居振る舞いも堂々としていて貫禄を感じます。

次のベートーヴェンは、実に素晴らしかったです。
1楽章、2楽章も去ることながら、3楽章のフーガになったときの重厚さ、スケールの壮大さは圧巻でした。
で、関本さん、この方、本当に強い音がすごい!
かつて小ホールでここまで響くピアニストはいなかったんじゃないかと言うほどに、
強音がものすごく大きくて、しかもずしんと芯があって響き渡る音なのです。
けっして汚かったり、割れたり、耳を塞ぎたくなるような騒音ではなくて、
本当に本当にきれいな強音なのです!これは最初から最後まで通してずっと感じ続けたことでした。
ピアノのダイナミクスと言う魅力の限りを見せつけられたベートーヴェン、素敵でした。

休憩を挟み、後半はオールショパンです。
それまでのしっかりしたタッチにさらに音色の透明感が加わって、大変聴き応えがありました。ショパンコンクール4位の本領発揮と言ったところでしょう。

スケルツォは卓越したリズム感と、キラキラした音色が相まって、
とても躍動感溢れる演奏に。時間の操り方が実に巧いんですね。
ミスもありましたが、スカッと爽快で、これまた最後の一音を弾くと途端にすくっと立ち上がる様なんて、ホント、憎いったらありゃしない。(笑)

続くノクターンは、最初作品27-2だった予定が、ご本人のたっての希望で変更された曲です。
哀愁漂うメロディと、感情ほとばしる激しさの対比がお見事。実は私は、この曲に1番心打たれて、涙が出そうなくらい感動しました。

そして最後はバラ4です。
澄んだ音、お腹の底にまでずしんと来る強い音はなおも冴え渡り、
すばらしい演奏には変わりないのですが、ちょっとこのバラ4は冗長さが感じられましたね。コーダは息つく暇もないくらい、引き込まれてブラウ゛ォでしたけれど。

さてさて、拍手に応えてアンコールは三曲。
これがね〜、けっしていい加減とかそう言うことではないのですが、なんか、
パパッと弾いちゃうよ〜ってな感じでした。まあ、一曲目を除いてかなりのハイスピードだったし。^^;
それだけすごい!ってことなんですけど。

終演後はお決まりのサイン会がありました。が、私とびびは今回はパス。(^^ゞ
でも、サイン会に現れた関本さんをしばらくじ〜っと見てはいましたが。(笑)

今日はプログラム自体がわかりやすく、また、時間も短かったせいか、
びびも寝ることもなく^^;すごく楽しめたようです。また、びびは関本さんのことを
「かわいい!」(@_@)と言っておりました。はい、確かに愛すべきお顔立ちと、お見受けします。

今日のコンサートで何よりも強く印象づけられたのは、関本さんが、ご自分の音楽に確固たる自信を持っていると言うことでした。それは、ピアニストならば当たり前のことなのでしょうが、関本さんの揺るぎない自信は、音色や音楽の構築や、表現の端々にまできちんと根付いており、
それが音楽としての格や、表現の幅広さ、豊かさに如実に繋がっており、圧倒的な安定感をもたらして、聴く側を自然に安堵させる力となっているのでした。
これはすごい魅力であり、関本さんの強力な武器だと思いますね。
演奏はすばらしいんだけど、なんだか落ち着かず、終始ドキドキさせる演奏家もいますからね。^^;
関本さんは聴く側に、ただただ、そこにある音楽をすうっと伝えることができる、つまり余計なことを何も考えさせずに音楽に没頭させる、そう言うことができる一流の演奏家であるのです。

次回はぜひラフマニノフやリストなんかも聴いてみたいですね。
ラベル:ピアノ 関本昌平
posted by 乃琶 at 06:53| Comment(6) | TrackBack(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月25日

イリーナ・メジューエワ ピアノリサイタル 2007.8.24

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びびと二人、イリーナ・メジューエワのピアノリサイタルに行って来ました。
会場は札幌コンサートホールKitara。
プログラムは次の通り。

ショパン:ノクターン 変ロ短調 作品9-1
ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66
ショパン:華麗なるワルツ へ長調 作品34-3
ショパン:ノクターン 嬰ハ短調 遺作
ショパン:バラード第1番 ト短調 作品23
リスト:愛の夢第3番
リスト:コンソレーション第3番
リスト:ラ・カンパネラ
ドビュッシー:ベルガマスク組曲 1前奏曲 2メヌエット 3月の光 4パスピエ
ドビュッシー:喜びの島
メトネル:《忘れられた調べ》より 波の舞曲 作品40-5 田舎の舞曲 作品38-5 花の舞曲 作品40-3 優美な舞曲 作品38-2 祝祭の舞曲 作品38-3

●アンコール
スクリャービン:左手のためのプレリュード 作品9
ショパン:プレリュード 作品28-24
ショパン:ノクターン 作品15-2

数日前から持病の座骨神経痛が出ていて、この日も思わしくなく、鎮痛剤を飲んで行きました。ということで、覚え書きもいつも以上にさらりと書きます。

メジューエワは今年で日本でのデビュー10周年と言うことですが、ステージに現れたその風貌はデビュー当時とちっとも変わらぬ少女のような風情で、派手なドレスではなく、
慎ましやかな、赤毛のアンに出てくるようなワインカラーを基調としたドレスでとても清楚な雰囲気。

この方は、楽譜を見ながら弾くことで有名ですが、その趣旨はプログラムにも記載されていたように「作曲家の意図に忠実でいたい」と言うことです。
と言うことで、しっかりと楽譜を携えたメジューエワ、隣には譜めくりの方がいました。

最初のノクターン、まずで出だしがとてもゆっくりなのに驚きました。
というか、メジューエワはすべての曲のテンポが遅めでした。
終始焦ることなく、自分のペースで、とても一音一音しっかりと弾いて行くのに、強い印象を受けました。
これが楽譜に忠実に、と言うことなのかなあと・・・。
一音一音忠実に、と言うのはとてもわかるのですが、そのせいか少し、音楽的な流れが停滞してしまうところも多々見受けられ、その辺がこちらの呼吸とも合わないような気がして、実は前半は聴いていてとても疲れてしまったのでした。
でも、それもだんだんと慣れて来ると言うか、メジューエワの呼吸に合って来ると、
これが何とも心地いいのです。

そして、やはり特筆すべきは、音がものすごく綺麗なこと!
すべてが透き通っていて、けっして濁ったりせず、強い音も耳が塞ぎたくなるような爆音ではなく、一本すうっと芯が通った心地よい音なのです。

楽譜をしっかりと目で追いながらなのもあってか、メジューエワは激昂したりありがちなオーバーアクションと言うものがないのですが、腕の使い方がとても印象的で、
例えば片手になるところは、必ずもう一方の手を鍵盤の上で歌わせるように指揮をするように振るのが素敵でした。

自分のテンポを保って、クリアーでブリリアントな音色で奏でられた
ショパンのバラード1番は、最後まで小さなほころび、危ういところは一つもなく、本当に涙が出るほど美しかったです。

ラ・カンパネラは、この曲が超絶技巧で超難曲であるかと言うことを全く忘れさせてしまうくらい、抜群の安定感と、天上の音色で私たちを酔わせてくれました。
素晴らしい!二部にも期待が膨らみます。

二部はドビュッシーとメトネル。
実は、私が1番良かったと思ったのはこの「ベルガマスク組曲」でした。
中でも”メヌエット”と”パスピエ”が白眉。
ピアノを学んでいる端くれとして申し上げると、舞曲と言うものの難しさは半端じゃなく、たとえプロのピアニストの方でも、「これって???」と言う演奏にあったりするものです。
しかし、メジューエワはこの2曲の古典舞曲をしっかりと自分のものにしていました。
メヌエットは、とかくもっさりとしがちなのを、リズムのメリハリを鋭角につけて、
しかしながら、けっして洗練され過ぎない絶妙な音色でもって、メヌエットの趣を巧みに表現していました。
パスピエは「踏み踊り」という意味そのままに、とても軽やかで、短調の中にもすごく弾むものを感じさせてくれました。ああ、この曲大好きなんです、こんな風に弾けたらなあ・・・。

喜びの島も誠に安定した演奏で、もう少し遊び心があってもいいのかな?とも思いましたが、どうも、昨今派手で速くて、と言う演奏ばかりに慣れている耳には
あたかも心が浄化されて行くがごとく、麗しい音の群れにドビュッシーが描こうとしていた無数の色の帯が何枚にも広がって行くような情景を見る想いがしました。

最後はメトネルです。
メトネルはさすがですね、さすが第一人者と言う感じでした。
楽譜を食い入るように見つめるのは変わりありませんが、今までで1番リラックスして弾いているように見受けられました。
メトネル特有のメロディアスな旋律はどこまでも切なく、そして情熱的なところは雄々しく、5曲の中で様々に変化するドラマが楽しめました。

すべてを弾き終えたメジューエワですが、相変わらず少しはにかんだ表情で、疲れた様子もなく、丁寧に答礼。
小柄な少女のような風貌を讃えたピアニストは、難曲の数々を弾き終えたと言う素振りも全然見せず、最初から最後まで淡々と言うか、本当に本当に自然体なのでした。

う〜ん!!凄すぎる!!
改めて、名曲ばかりを並べたプログラム全部を高い完成度で弾ききり、なおかつ平然としているなんて、驚愕するしかありません・・・。その見た目で騙されそうになりますが^^;、相当な実力の持ち主であることを充分思い知らされるリサイタルでありました。

アンコールは鳴り止まない拍手に応えて三曲。
これまたどれも見事な演奏で、会場は最後まで酔いしれました。

終演後はサイン会があり、私とびびも当然のように並びました。
びびは



天使の夢〜珠玉のピアノ小品集

に、私は




Chopin : 4 Scherzi / Irina Mejoueva


にサインをしていただきました。

びびは「何語で話したらいいの〜?」と困っていたのですが、日本を拠点にかつどうしているとあって、とても流暢な日本語を話していらっしゃいました。
私が「とっても素敵でした」と言うと、「ありがとうございました」とおっしゃって、
にこっと微笑まれました。それはもう、まさに天使の微笑みで・・・。
やっぱり、綺麗、かわいい!!^^;

実直でひたむきで、作曲家と音楽とにどこまでも向き合おうとする真摯な姿勢から産み出された音楽の強さに真に打たれた一夜でした。

メジューエワさんのこれからのご活躍をいっそう期待したいと思います。
posted by 乃琶 at 16:47| Comment(2) | TrackBack(1) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月21日

小山実稚恵リサイタルシリーズ〈音の旅〉第3回 萌黄色:自然の情景・懐かしさ・キエフの大門 2007.6.20

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小山実稚恵さんの〈音の旅〉シリーズ、第3回に行ってきました。
いつものように会場は札幌コンサートホールKitara小ホール。

今回のテーマ色は萌黄色、プログラムは以下の通り。

ハイドン:アンダンテと変奏曲 ヘ短調 作品83Hob.XVII-6
ウェーベルン:ピアノのための変奏曲 作品27
シューマン:子どもの情景 作品15
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」

●アンコール
グリーグ:抒情小品集より「春に寄す」
チャイコフスキー:四季より「舟歌」
シューマン/リスト:春の夜

今回も前回に引き続き、席は一階ほぼ中央の前方。この席は、演奏者に近すぎず、遠すぎず、演奏者の表情や手や足の動きがとても良くわかり、音もとてもクリアに届くので、特等席です。ちなみに次回もほぼここの席です。(^^)

今回の小山さんの衣装は光沢の入った、テーマカラーの萌黄色。すごく品があって、落ち着いた中にも華やかさが感じられます。「わ〜、今回も素敵♪」と私とびびは早くも目がハートに。(笑)

最初のハイドンが始まりました。すっごく音がキラキラしている!!!(^^)!
これがこの日、小山さんに感じた第一位印象でした。
そして、この”煌めき”というのが最後まで私が感じた今回のキーワードでした。

ハイドン最後の変奏曲は初めてちゃんと聴きましたが、f mollとF Durが交互に行き交って、ハイドンらしいかわいらしく明るい曲想の中にも、人間の深い悲哀や苦しみみたいなものが感じられます。
小山さんは、明解にメリハリをつけて、沈鬱することなく、前へ前へと弾き進めて行きます。それはあたかも、どんな人生にも必ずいつも希望の灯火がともっていると教えてくれるかのよう・・・。高音部の素早いアルペジオの煌めきや、堂々としたベートーヴェンを思わせる部分の轟音の冴えは、今までで聴いて来た中で一番、と思いました。
威風堂々とした小山さんに、最初から私は魅了されていました。

続くウェーベルン。これは・・・確かポリーニのCDとかで前に聴いたかな?^^;
古典から一気に現代へと一足飛びの小山さんの音は、打って変わってシャープ。
それにしても、すごく面白い曲。難しく言えば12音技法で書かれているとのことですが、まるで音の遊びを聴いているよう。

さて、前半最後はシューマン、子どもの情景です。
また、ここで先ほどまでのきりり、とした表情から小山さんは、とても温かな微笑みを讃える表情へ。その愛情溢れたお顔はまるで母親のよう、言うなれば、そう、クララ・シューマンでしょうか。(^^)
第1曲。私ものすごく好きなんですよね〜。小山さんのまろやかな音が「さあ、おいで、おいで」と聴いている者すべてを夢の国へと優しく導いてくれます。
小山さんは、曲と曲との間に間を置かず、一つの童話を読み聴かせるように、抜群のタイミングで次へ次へと誘っていきます。さすが!
ゆっくりとしっとりと、お話を聴かせる時はどこまでも情感たっぷりに、逆にそんなお話を目をキラキラと輝かせて聴いている子ども達の無邪気な様子を表す曲のときは、思いっきり元気よく、そして時にはいたずらっぽく、軽快に。
すごくすごく小山さんがこの曲を愛しているのだなあと言うこともとても伝わってきました。
第7曲。実は正直、トロイメライはあまり好きではありませんでした。何と言うか、最初からソフトペダル踏みっ放しでどこまでも甘ったるく、ただくぐもった音で演奏者自身が曲に埋没して、聴き手はただ、眠くて退屈で・・・みたいな演奏が多かったものですから。
しかし!小山さんは違いました。
音は、確かに甘い、でもけっしてしつこい甘ったるさではなく、音にもきちんとしたキレがあり、甘さのバランスがほど良いのです。
どちらかと言うと、小山さんはどの曲もテンポが割と速めで弾かれるのですが、トロイメライはもちろんゆっくり。でも、これ以上遅いと緩慢になる、と言うちょうどギリギリの境界で、とても居心地の良い夢を披露してくれました。
トロイメライっていい曲ですね。改めて。
13曲。いや〜、もう、実にいいです。お話を聞かせていた坊やは、素敵な夢を見ているんだね、とびびとにっこりし合いました。(^^)

さあ、とうとう後半。
今日のメイン、「展覧会の絵」です。
これを生のピアノで聴いたのは私は初めてでした。オケでは聴いたことがありましたが、
小山さんの演奏を聴いて、つくづく「ピアノがいい」と思いました。
それほどまでに、最後の曲はとても素晴らしかったのです!!

小山さん自身が解説されているように、この曲はいかついロシアの大男が書いた壮大なスケールの作品。当然、オクターヴの連続や和音の連打が執拗に続いて、もう見るからに(聴くからに)体格が劣る日本人、そして女性にはちょっと大変な曲かも、と言う心配がよぎるのですが・・。
が、そんな愚かな私の心配は全く必要なかったですね〜。
ひゃ〜、すごい!!
プロムナードの最初の音を聴いてまず、驚きました。何と言う迫力でしょう。これから後、プロムナードの変奏と10曲が続くと言うのに、小山さんには一切の手加減なし。
聴いている者すべてが、瞬く間にこの壮大なスペクタクルにド〜ッと引き込まれました。
この曲も相反する二つの曲想が交互に現れます。暗く重々しい曲と明るくリズミカルな曲の対比が何とも楽しいのですが、
暗く重々しい曲は例えば第1曲のように、ただ不気味なだけではなく、そこに小山さんの容赦ない冷酷さが加味されると、真面目に背筋が凍ります。^^;
明るくリズミカルな方では、第5曲が特に良かったですね。「殻をつけた雛の踊り」です。もうもう、その雛達の声のけたたましさと言ったらありゃしない。ここでも見事だった高音部の煌めき、小山さんは意識的により際立たせようとしているようにも感じました。
第7曲の朝の市場の活気に胸を躍らせていたら、一瞬にしておどろおどろしい第8曲の「カタコンベ」でまたもや、ドキドキ・・・。
色彩とイマジネーション豊かな様々な絵を、私はプロムナードを通って次々と巡り歩いているような錯覚に陥っていました。とても幻想的で不思議な世界、それでいてとても魅力的な小山ファンタジーワールド・・・。
あっという間に、第9曲へ。小山さんの迫力はますます増して行きます。そして今度はそこに妖気も漂って、ますますもって、恐ろしいこと。
ここで、オクターヴの連続がありますよね。高音部で華々しく行った後、一オクターヴ下で同じ音型という、超、超絶連続技。
小山さんの手、ものすごいしなりで、圧倒されました。それにしても、これだけ轟々と響き渡っているのに、相変わらず音が綺麗なこと。と、改めて感服していましたら、とうとう終曲へ。

いや〜、みなさま、ここまでの小山さんでも充分に感嘆し、感激していた私ですが、終曲には度肝を抜かれました。
え!?小山さんて、大男だったの!?\(◎o◎)/!
と思うほどに、地を揺るがすかのような大迫力でますます私たち聴衆に迫って来たのです。
荘厳なキエフの大門、そこに鳴り響くたくさんの鐘、聖歌隊の合唱、と言った風景とともに果てしなく広がるロシアという地のスケール、そして歴史の重さ、そう言ったものが
小山さんの渾身の演奏からひしひしと伝わって来て、まさに圧巻でした。

最後の音を満身の力を込め、弾き終わった小山さんに会場中が大きな拍手を送りました。
こ、これは・・・。ブラヴォどころじゃありません。そんなもの軽く飛び越して、
ブラヴィッシモ!!!\(^o^)/

顔をほんのり紅潮させた小山さんは、またいつものような穏やかな表情に戻り、客席に向かって何度もお辞儀を繰り返していました。やっぱり、相当なエネルギーをお使いになったことが、伺い知れました。
が、アンコールには何と三曲も弾いてくださいました。嬉!!(^o^)
「展覧会の絵」の後に、しっとりとした抒情作品を三曲も弾いてくださるとは、
何と心憎いことでしょう!!
これでお客さんたちの感激度は一段とヒートアップしたのは言うまでもありません。

終演後は、いつものようにサイン会へ。
今回は、私は小山実稚恵 名門ロイヤル・フィルと共演 リスト&チャイコフスキー:ピアノ協奏曲に、
びびは小山実稚恵&ディヴィス ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調にしていただきました。

私はまさとさんが運営されているピアニスト 小山実稚恵(こやまみちえ) さん ファンサイト -- Pianist Michie Koyama Fan Site --のお話などをさせていただき、びびはサインに自分宛の名前を入れていただいたり、再び気さくで温かな小山さんお人柄に触れることができ、またまた感動でした。

小山さん、素晴らしい演奏をどうもありがとうございました。また、秋にお会いできますことを楽しみにしています♪(^^♪
posted by 乃琶 at 20:39| Comment(6) | TrackBack(1) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月05日

ラファウ・ブレハッチ ピアノリサイタル 2007.6.4

blechacz00003.jpg

ラファウ・ブレハッチのピアノリサイタルに行ってきました。
もちろん、いつものようにびびと二人です。
2003年浜松国際ピアノコンクール最高位、2005年ショパン国際ピアノコンクール優勝後、日本全国でもリサイタルを行って来たブレハッチですが、このたび、津軽海峡を越えてやっと北海道に来てくれました。私はチケット発売すると即、購入。この日を心から待っていました。

会場は、札幌コンサートホールKitara、プログラムは以下の通り。


J.S.バッハ:イタリア風協奏曲 ヘ長調 BWV.971
リスト:3つの演奏会用練習曲より「軽やかさ」ヘ短調
リスト:2つの演奏会用練習曲より「森のざわめき」「小人の踊り」
ドビュッシー:版画〜塔、グラナダの夕べ、雨の庭
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 op.60
ショパン:2つの夜想曲 op.62 第17番ロ長調、第18番ホ長調
ショパン:24の前奏曲 op.28より 第13〜24番

●アンコール
ショパン:マズルカop.17-2
ショパン:ワルツop.64-1 変ニ長調「子犬」
モシュコフスキ:花火

今回は、舞台正面向かって左上の二階、ブレハッチをやや斜め左後ろから、バッチリ見下ろせると、買った席です。

いよいよ開演。拍手に迎えられ、ブレハッチが登場です。
おお!ブレハッチだ〜!!とそれだけで私は少し感動・・・。(笑)

「イタリア協奏曲」は、とても躍動感溢れる演奏でした。かなりハイテンポで、ぐいぐいと弾き進め行くのですが、この方、全曲通して感じたことでもありますが、すごくタッチが軽い!そして「音が綺麗!」とはびびの一言。ぐいぐいと押して行くのに、それに伴う傲慢さや、威圧感と言ったものは全くなく、まさに今の札幌の季節に漂う風のごとく、爽やか。
と思いきや、要所要所で決めるときはスパッと、ナイフで切ったような鋭さでピシッと決めてくれます。
二楽章では、少し落ち着いて聴かせてくれましたが、三楽章になるとさらにテンポは加速し(マルティン・シュタットフェルトほどではありませんが)、一気にコーダまで。
なかなかシャープなバッハでした。

続くリスト。最初は「軽やかさ」。これが〜、本当に「軽やか」でビックリ(@_@)しました。まるで羽が生えているのか?と思う音色なのです。
特にブレハッチは、高音の鳴らせ方が非常に巧いですね。とても細かい極小の粒から、少し大きめの真珠の粒まで、その転がし方のヴァリエーションの多さには、驚嘆。
「森のざわめき」。恥ずかしながら、私、三年前にかなり突っ込んで深くやった曲です。
「軽やかさ」、次の「小人の踊り」とともに、ブレハッチのデビューCDに収録されているのはすでに聴いていましたが、今回生で聴いてまた違った印象を受けました。
ブレハッチ、これまた他の曲でも感じたことですが、タッチが割とノンレガートなんですね。「森のざわめき」も、けっこう、ノンレガートで通していて、そよそよとそよぐ風、というよりはまさに「ざわめき」、(余談ですが私が弾いたときの標題は「森のささやき」という表記でしたので、そよそよとそよぐ風を意識して弾きました)なるほどなあ、そう言う解釈もあり、と面白かったです。途中、ミスもあったりしましたが、次の「小人の踊り」のすばしっこさとともに、とても楽しんで聴けました。

ドビュッシーは版画から。
ここでいっそう、ブレハッチ特有の音色が本領を発揮します。
今回、座った席からは手と足の様子が良くわかり、ブレハッチはuna cordaをかなり好むと言うこともわかりました。元々の透明感のある音色がuna cordaに寄って、そこに甘さが加わり、ドビュッシーの持つ印象派の絵の具が何色にも広がって、グラデーションが展開されて行きました。
私は特に最初の「塔」がよかったですね。最後の「雨の庭」になると、これまたお得意の?速いテンポで細かなタッチの正確さを際立たせて、私たちをドビュッシーの摩訶不思議な世界へと引き込んでくれました。

ここで前半終了。う〜ん、なんだかあっという間。ブレハッチの“軽やかさ”を再び実感します。

後半はオール・ショパンです。
最初は「舟歌」。ゆったりとした左の伴奏に乗って、ロマンティックな右の旋律が朗々と流れて行きます。
やはり、ここでも際立つのはその音色の透明度。これはノクターンにも言えますが、高音部分の素早いアルペジオは、もう息を呑むほどの美しさ。
一糸乱れぬ二重トリルは、幾重にも折り重なる波波のきらめきを豊かに想像させてくれます。力強いffの響きも、力強さを持ち合わせながらもどこまでも品があり、ああ、これがブレハッチのショパンなのか、と改めて感じさせてくれました。

続くノクターン。涼やかな鈴の音のようなトリルが、心地よいこと。いつまでも聴いていたかったです。そして、休符の歌い方が見事このうえない!ちゃんと空間にメロディがあるのです!!う〜ん、休符、こんな風に歌えたらなあ・・・。

とうとう最後です。ラストは前奏曲後半の12曲。
一曲一曲にいろいろ感じるものがありましたが、特に15曲目「雨だれ」と終曲に特別な感慨を覚えました。
「雨だれ」の、中間部のあの、ひたすら同音G♯が続くところ。ドンドンドンドン、またはガンガンガンガン、みたいな感じで弾かれるのが多いかと思うのですが、ブレハッチのは???もうのけぞりました。
音が・・・透けている!!??(*_*)
トントントントンでもなくて、もっと軽い?いえ、はっきり言って言葉ではどう表現したらいいのかわかりません。いや、けっして音が抜けている訳ではありません。心の奥底に届く確かな存在感のある音なのですが、それはまさに雨粒がごとく、音の粒でありながら、向こう側の景色がすべて見えるような、そんな文字通り透き通った音なのです。心臓の鼓動のようなその響きを聴いていると、とても心が落ち着いて行くのがわかりました。
「雨だれ」って、実はこういう曲だったのかしら・・・。
終曲は、ブレハッチ自身がすごく興奮し、熱狂していましたね。勢い余って、最後の方で派手に音も外しましたが、そう言うことも何もかも、この名演に華を添える演出となり、
もう私もびびも、そして会場全体が大興奮状態になりました。
終わった後には、ブラヴォがあちこちから飛び交ったのは言うまでもありません。

いや〜、素晴らしかったですね。バッハの一番始めの音を聴いたときにびびが「音が綺麗」と思わず呟いたように、音色の麗しさに終始心奪われる演奏ばかりでした。そして、今回は久々に手がすごく見える席に座ったので、鍵盤の波間を自由に闊歩するブレハッチの長い指もよく見え、その一切無駄のない、俊敏な動きにも大変惹かれました。

鳴り止まぬ拍手に応えてアンコールは三曲。
いや、もう、ショパンの2曲には、私は涙が出ました。最初のマズルカは、もう、これが本物のマズルカ!という、これぞブレハッチの真骨頂!独特のリズムまわし、それを生き生きと奏でるブレハッチにただただ、感動でした。
そして、なんと、次には「子犬のワルツ」をやってくれたではありませんか!?\(◎o◎)/!
子犬は、一昨年のショパンコンクールライヴで、私がブレハッチの演奏で一番感動した曲。ショパンがサロンで弾いた、そのものでは?と思った演奏です。それが目の前で見られ、聴けるなんて!?
ここでも、ブレハッチ独特のノンレガートなパッセージの転がし方が輝いて仕方がなかったです。こんな風に弾く人、見たことありません。誰にも真似の出来ない優雅さと品格が、演奏のそこかしこに滲み出て来ていて、感動のあまり、涙と震えが止まりませんでした。(T_T)
最後のモシュコフスキを終えて、また万雷の拍手に迎えられると、何度も答礼をしてブレハッチは去って行きました。

「早かったね〜。早かった〜」とびびが思わずこぼしたように、あ〜、やっぱりあっという間。軽やかなブレハッチは、最後の最後までスマート。ホールには、高貴な残り香がいつまでも漂っていました。
すばらしい演奏の数々に私とびびは大満足でした。ただ、惜しむらくは、会場が三分の二ほどしか埋まっていなかったことです。ショパコンの覇者なのに!
ブレハッチ、お客さんの数が少ないことにがっかりせず、ぜひともまた来札してほしいです。
音の粒の向こう側が透けて景色が見える、「雨だれ」がもう一度聴きたいですね・・・。
posted by 乃琶 at 13:26| Comment(6) | TrackBack(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月29日

札幌交響楽団第498回定期演奏会 2007.4.28

sakkyokosuge02札響の第498回定期演奏会に行って来ました。
場所は札幌コンサートホールKitara。

演目は以下の通り。

指揮/広上淳一
ピアノ/小菅優
管弦楽/札幌交響楽団

ヴェルディ:歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調Op.58
ベルリオーズ:幻想交響曲Op.14

●シベリウス:樅の木(ピアノ独奏)

三日前に同じ場所で行われました、外山啓介さんの衝撃デビューリサイタルの余韻も冷めやらぬまま、これまた私がもう、五年ぐらい前から待ちに待ち焦がれていた、小菅優さんの初めての生を聴く、と言うことでテンションは上がりっ放しでした。

今回の席は、舞台の真後ろ、はい、パイプオルガンのほぼ前です。
札響ではかつて、イッサーリスのときにこの位置に座ったことがありますが、指揮者の表情や動作、そして各楽器の譜面がよく見えて、なかなか面白いのです。今回のお目当てはもちろん小菅さんですが、いつもピアニストを右側からしか見ないこと多いので、左から見たらどんな風かなあ?というのも興味津々でした。

開演時間となり、お客さんたちがめいめいの席につくと、間もなく、オケの方達がぞろぞろと舞台に登場し、音を出し始めます。
私はこの瞬間がたまらなく好き。「さあ、楽しい音楽の時間です」とは、
”のだめカンタービレ”のセリフですが、まさにその言葉通りで、とっても胸が高鳴ります。

さて、コンマスの伊藤さんの指示でチューニングが終了すると、いよいよ指揮者の広上さんが登場。最初は「シチリア島の夕べの祈り 序曲」。
オープニングに相応しく、華やかで心が浮き立つような曲でした。
広上さんの指揮は初めて拝見しましたが、まるで踊るように振る方ですね〜。
そして、いっぱい声を出される♪なかなか個性的で、ちょっと目が離せない感じです。

そしていよいよ、小菅優さんへと続きます。
ここで、ピアノを入れたり、オケ編成変更のため、舞台の上では大掛かりな配置換えが。
ピアノと椅子や譜面台の位置が落ち着くと、再びオケの方々が登場。
おお!ベートーヴェンの4番ピアノコンチェルトは、弦はコントラバスがいない!!金管はホルンはいるけれど、トランペット(コルネット?)は一人、それだけで他の金管はいないんですね〜!
そう言うのも、生で観てみないと、実感し得ないことで、いや、やっぱりオケは観るのもとても面白いです。

会場が暗くなり、水を打ったように静まり返りました。そこへ広上さん、続いて小菅さん登場!おお!私が、録画して何度も繰り返し観ている「情熱大陸」などでもおなじみの(全く同じかどうかはわかりませんが)深紅のドレスです。
豊かな黒い髪を揺らしながら、にこやかに答礼するとピアノの前に座りました。

「ベートーヴェンピアノ協奏曲第4番」。
この曲は、ピアノのソロで始まりますが、その手法は当時は掟破りで画期的なことであったらしいです。
とても静かに、しかし尋常ではない深い抒情を讃えた最初の音を聴いたときから、もうその瞬間、ぐぐ〜〜っと、ものすごい引力で引き込まれてしまいました!
いや、それは私だけではありません。会場のお客さんの誰も彼もが・・・。
いや〜、この4番コンチェルトは、気品溢れる精緻な曲想が特長ですが、小菅さんのピアノは気高さの極み。
細かいパッセージの正確さ、目を見張るほどの指さばきからは、非常にクリアでブリリアントな音がコロコロとこぼれ落ちて行きます。
もちろん、ゆったりとしたところでは、どこまでも伸びるふくよかな音で、大変気持ちがよい。この曲の高貴な香りをいっそう高めて行きます。
音色や音楽表現の素晴らしさは、言わずもがななのですが、私がここでまず強烈に感じたのは、小菅さんの圧倒的な存在感と安定感でした。
もうね、見ていて何の心配もいらないの。(笑)すごくすごく、安心していられるのです。本当に、まさに極楽浄土のような安らぎを感じました。

おのおのの曲想に合わせて、変化する小菅さんの表情もとてもいいです。
優しく、ささやくようなところでは、心から慈しむような微笑みで、激しく雄々しいところでは、眉間に皺を寄せて^^;、思いっきり苦悩の表情を浮かべます。
曲の語り部のような、見事な表情にも魅了され、私はよりいっそう、小菅ワールドに没入。

小菅さんは良く指揮者とオケの方も見ます。本当に良く見る!これは、真後ろの席を取ったために、今回良〜くわかった収穫の一つですが、
特に広上さんとは、二人で頭を突き合わさんばかり。このせいか、ドンピシャのタイミングで要所要所も決め、またオケの方との掛け合いも、抜群のコンビネーションを産み出していました。
やはり、ここだ!というポイントが決まると曲がものすごく締まり、それが曲の品格にも繋がりますね。そしてそう言う決め所が巧く行くと、演奏者の方もますます乗っても行きますし、音楽が生き生きと流れていきます。
広上さんの所作もさらに流麗に、そして歌声?かけ声?もまるで音楽の一つの様に
同化してますます奥行きのある世界を展開していました。

さあ、何と言っても、一番の聴き所はコンチェルトの最大の山場と言うべき、1楽章と3楽章のカデンツァでしょう。
貫禄充分に(ちょっと中村紘子先生を彷彿させる(^^ゞ)、華麗な技巧と並外れた音楽性で、まさに小菅優の本領発揮!鍵盤の上でこそ、自由自在に感情を表せる、と言うことをまざまざと見せつけてくれました。
しばし、周りにオケが存在していることすら忘れるような、小菅さんの独壇場。
本当に本当にただただ、溜息が漏れるだけ、言葉にならないほどの見事なカデンツァでした。

終楽章の、メリハリのあるメロディを軽快に弾き進めて行く小菅さんのピアノはいよいよ冴え渡って行きます。曲に没頭し、その世界を心から楽しいんでいる小菅さん、広上さん、オケとともに、お客さんも一緒に楽しんでいます。
ホール一体が一つになって、何とも言えない興奮状態を私も味わっていました。
最後のフィナーレも、ばっちりとオケと合って、コンチェルト終演です!!
「ブラヴォ!」私も叫んでいました。もう、四方八方からブラヴォの嵐です。

小菅さんはまず広上さんと、次にコンマスの伊藤さんと握手、続いてハグしていました。
わ〜、素敵♪やっぱり外国流っていうか、この人はもう根っから身に付いているんですね〜。(^^)

満面の笑みで小菅さんは答礼。もう、拍手は全然止まないんです。カーテンコールで何回答えたかな?3回目ぐらいのときに、嬉しいサプライズが!?なんと、小菅さんがピアノに座り、アンコールをしてくださったのです!?\(◎o◎)/!
弾いてすぐに「わ〜、樅の木だ〜」とわかりました。大好きな曲でしたから。
もう、これもなんて切々と訴えてくるのでしょうか。ちょっとシャンソンっぽい旋律が
小菅さんの手にかかるとさらに哀愁とロマンを帯びて、もう泣けそう・・・。
改めていい曲だな〜、と感じました。

さて、休憩後は「幻想交響曲」。オケも大編成になり、曲は全5楽章からなり、まさに総力戦と言った趣です。
この曲は、一応知ってはいますが、詳しくもなく^^;、プログラムの解説でそのストーリィを知りました。
大意は「病的な感受性と激しい想像力をもった若い芸術家が、恋の絶望に耐えかねてアヘン自殺を図る。しかし致死量に達しなくて死にきれず、奇怪で幻想的な夢を見る。恋する女性は一つのメロディとなって現れる」だそうで、まるで歌劇の様にワクワクしながら聴きました。

変化に富んだメロディや曲想も去ることながら、この曲でとても面白かったのは、楽器の使われ方です。
様々な楽器がソロを奏でるのですが、例えばオーボエのソロとクラリネットのソロの掛け合い。これが、ただ普通の掛け合いではなく、オーボエは普通に舞台上にいるのですが、クラリネットは、二階客席の右前方に。まるでこの世とあの世の語り合いの様に、何とも不思議な気持ちになりました。
また、ヴァイオリンの音程には関係なく、弦をこすり合わせるだけのような奏法は、
(何と言う奏法なのでしょう?)今まで見たことがなかったので、びびと二人で目を丸くしてしまいました。
ワルツのときの、ハープ二台の優雅な響きにうっとりとしたり、ファゴットの素早い動きに感嘆したり、いろいろありましたが、極めつけは終楽章の鐘の音。
広上さんが、手を高く上げて指図した途端、後ろから「ゴ〜〜〜ン」と言う音が・・・。
振り返ると、パイプオルガンの前に二つの鐘があり、それが交互に厳かな音色を放っていたのです。鐘はいつの間に?^^;
終楽章は「魔女の宴」の場面、死んだ主人公のさまよう魂を弔う鐘なのでしょうか?
とても効果的で、神秘的で、これこそ「幻想」!!と想いましたが、もろ真後ろからの鐘ってすごく頭に(脳天に)響くんですよね。それだけがちょっと・・・。^^;

最後は狂乱のフィナーレのごとく、オケは総動員で超盛り上がりを見せ、広上さんの一振りでこの壮大で斬新なスケールに満ちた交響曲は幕を閉じました。

これまた、ブラヴォの嵐、拍手喝采です。広上さん、そしてオケの方々が何度も答礼をし、カーテンコールにも応えましたが、アンコールはありませんでした。
いえ、もう全力投球、完全燃焼だったと言うことで、私もびびも含めお客さんたちは充分に納得です。

当たり前ですが、小菅さんのサイン会もなく^^;、(でも私はすでにサインを持っているのでいいんです♪)でもでもみんないい顏をして帰って行くのを見ますと、どのお客さんもこの演奏会に大満足だったんだなと言うのが良〜くわかりました。
出口付近には、今、熱演を繰り広げてくれた札響の方々が「ありがとうございました」と言って、お客さんたち一人一人に頭を下げていました。
前回の札響定期のときも、このようだったのですが、これはプロオケの演奏会ではとても珍しいことではないでしょうか?
やはり、地元に根付いた”札響”ということで、地元のお客様を大切にしようと言う意識なのでしょうが、こうしてくださるとやはり親しみも湧きますし、また聴きに来よう!と思いますね。(^^)そして小菅さんのピアノも・・・。

私は小菅優さんのピアノ独奏のCDは全部持っているのですが、協奏曲だけは持っていなかったんです。でも、今回の演奏を聴いて、俄然欲しくなってしまいました。



小菅優 モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番

って、モーツァルトなんですけどね。^^;
と・・・今検索したら、こちらを発見!!



小菅優 ファンタジー

なんと新譜が出るんですね!これも絶対に買います!!(^^♪

と言うことで、私はこれから「幻想交響曲」を聴こうかな。(笑)
私のコレクションの「クラシック芸術の遺産」の中からの一枚ですが、
録音は



ベルリオーズ:幻想交響曲[1945年録音]〜モントゥー&サンフランシスコ響名演集

こちらと同じものです。

いや〜、やっぱりオケは抜群に楽しいですね!!
でもって、やっぱり小菅さんは超すごい!!
posted by 乃琶 at 21:16| Comment(4) | TrackBack(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月27日

外山啓介 デビュー・ピアノリサイタル 2007.4.25

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これこそ待ちに待った、札幌出身の大型新人、外山啓介さんの
デビュー・ピアノリサイタルに行ってきました。
外山さんはその風貌と実力から、”のだめカンタービレ”の“千秋”とも例えられ、デビュー前から人気は急上昇。
全国ツアーもサントリーホール(大ホール)は早々に完売、そしてこの札幌コンサートホールKitara(大ホール)も、一ヶ月前ぐらいにA席はすべて売り切れ、そして当日行ってみたら、実は全席完売でした。^^;
さすがに地元出身と言うこともあり、札幌、いや北海道はすごい盛り上がっているんだなあと改めて思い知りました。

プログラムは次の通り。

ショパン:
ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」変ホ長調 op.18
バラード第1番 ト短調 op.23
ポロネーズ第6番 変イ長調「英雄」op.53
ポロネーズ第7番 変イ長調「幻想」op.61
夜想曲第17番 ロ長調 op.62-1
夜想曲第18番 ホ長調 op.62-2
ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 op.58

●アンコール
マズルカ第13番 イ短調 po.17-4
ワルツ第6番 変ニ長調「子犬」op.64-1

以上、アンコールも含め、オールショパンです。


私とびびの席は、一階12列目の37、38。前方やや右で、ちょっと手までは見えませんが、外山さんの華麗な弾き姿と表情はばっちりの場所でした。

さあ、開幕。爽やかな笑顔を振りまきながら、外山さん登場です。
360度すべてに丁寧なお辞儀をし、まずは最初の「華麗なる大円舞曲」へ。
ちょっと緊張気味かな?と見えましたが、外山さんは呼吸を整えると、
おなじみのメロディを奏で始めました。
すごい丁寧な曲運び。一音一音に煌めきを放ちながら、次々とめまぐるしく変わって行く場面に、私は酔いしれました。

続いて、「バラ1」。こちらはデビューCDにも入っていたので、外山さんの演奏は聴いてはいたものの、や〜、参りましたね。すごい、もう切々と魂に迫る迫る!
バラ1は、元々大好きな曲でしたし、人気もあるのでいろいろな人の演奏を聴いて来たんですが、ここまでぐっと来るのはまさに初めてで、繰り返しますが、参りました。(*_*;
実は、曲の終盤、だれもが苦しむ難所で、けっこう目立つミスもあったのですが、もうそう言うのはどうでもいいんですよ。
どうしてこんなに心を打つのでしょうね?短調の響きと、束の間の優しい旋律との音色の作り方がまず明確に違っていて、それがお互いを引き立て合っているんですね。
そして、これはこの後も何度も実感するのですが、ルバートの弾き方がものすごく巧いんです。
パパッとといかにも技巧に長けているでしょ?的でもなく、どちらかと言うとすごくゆっくりと、慈しむように弾くのです。で、普通、こういう風に弾くと、多少どころか、めちゃくちゃテンポが揺れすぎて、音楽崩壊に繋がって行くはずが・・・。^^;
外山さんは、それがなくって、ちゃんと一定の流れに引き込む技を持っているんです。
全くもって、絶句です。

さて、「ポロネーズ二曲」。どちらも超有名ですが、性格が正反対。
この弾き分けをどう見せてくれるのかも、大いに楽しみでした。
「英雄ポロネーズ」は、もう、こうだ!と気持ちを決めたら、鍵盤に指を置いて、
一直線!!
最初の出だしから、ダ〜〜〜〜〜ッと聴いている者すべてを乗せて
勇壮に進んで行きます。
強音でバシバシッと決めるところの、切れ味が非常に鋭い!付点とか、そう言うリズムが
一分の隙もなく精巧で、鮮やかで。なよなよしていなくて、とても潔いのがすごく心地いい。英雄ポロネーズはひたすらかっこ良かったです。
その反面、柔らかくポワンとした旋律は、本当に温かさに満ちていて、その対比の見事さにも感服。
それが見事に際立っていたのが「幻想ポロネーズ」。
私がこの日、一番感動したのがこの曲でした。
特に、左手と右手の二重トリルの美しさと言ったら!?(*_*)この世のものとは思えなかったです。
優雅さの裏に人間の内面性に迫る重厚さもにじみ出て、それでいて人を包み込むような
慈悲深さもあって、しみじみ感動しました。コーダのあの、付点の主題が流れて来たときに、ここでも泣きそうになったのは言うまでもありません。

休憩後は、「ノクターン二曲」から。
やっぱり、外山さんは、勇猛果敢な曲よりも、どちらかと言えば、静かに叙情を讃える曲の方がいい感じがします。私はそちらの方が好きですね。
ノクターンを聴いていると、Kitaraに来るときに、中島公園で見上げた、まだ明るい空に
ポッカリと浮かんでいた半月が思い浮かびました。あの月は、今は真っ暗な闇の中で
煌煌とした光を放っているのだろうか?と、そんなことをぼんやりと考えながら、
しんみりと浸ってしまいました。


さあ、一度舞台袖に引っ込んで、今日のラスト、「ソナタ3番」です。
外山さんは、それまで以上に集中力を高め、気を張りつめて弾き始めました。
もう、なんの小細工もない、直球勝負です。素直に外山さんがこう弾きたい、という率直さがそのまま伝わってくる演奏・・。それが実に気持ちいいです。
そして改めて、音色の美しさに感嘆。特に、極弱のパッセージが、鍵盤の上をまるで
羽根でなぞるがごとくのタッチで奏でられると、もうそれだけでうっとり・・・。
外山さんは3楽章まで一気に弾いて、そこで一度吹き出てたまらない、汗を拭いました。
もう、めちゃくちゃ緊張もされているでしょうし、この日は札幌は初夏の陽気となるほど暑かったですし、でも何よりも曲にかける情熱のほとばしりが
もう、汗を停められなくしていたんでしょうね。少々時間をかけて汗拭きをし、
そして、また呼吸を整え、終楽章へ。
暴走しがちな楽章ですが、ここでも外山さんの曲運びはとても丁寧です。
音の一つ一つに徹底的にこだわり、それでいてフレーズを大きくとって、
切迫する曲想ですが、ちっとも息苦しさを感じさせない。
低音部で力強く主旋律を奏でながら、右手は高音部でキラキラと降りてくるところなど、
もうキッチリキッチリ確実に始末をつけて、最後のフィナーレへ。
聴いている側も一緒に感極まり、最後の音を弾き切った瞬間、
割れんばかりの拍手、そしてブラヴォの声もあちらこちらから。真ん中でスタンディングオヴェーションする紳士のお姿も見えました。

外山さん、渾身の演奏に、もちろん私もびびも、やはり夢中で拍手しました。
弾き終えた外山さん、やっとホッとした表情を見せ、また笑顔で丁寧なお辞儀を360度しました。
そして、アンコールは二曲。染み入ってこれまたウルッと来た「マズルカ」と、
もう、本当にサロンコンサートの趣そのままの「子犬のワルツ」とで、
心から満足でした。(^^)

とても素敵で充実したリサイタルだったのですが、ただ、一つ残念なことが・・・。私が行った演奏会の中で今回ほど、お客さんの咳が酷かったことはありませんでした。
演奏会ではたま〜に、止むに止まれず、それも周囲に遠慮がちに”コホッ”とするのがマナーかと思っていましたが、この日はビックリするぐらいに風邪ひきが多かったらしく、咳が止むことがないのです。特に「幻想ポロネーズ」の中間部、夢見るように美しく、外山さんの繊細で麗しい音色が延々と続く部分で、あちこちで咳込みが・・・。(〜_〜;)
これには真面目に閉口してしまいました。外山さんも、非常にやりづらかったと思います。
事実、何度か一度鍵盤に手を置いたのに、その瞬間に”ゴホッ”とされて、手を引っ込めてしまう場面がありました。
やはり、体調不良で、特に咳が出るときは、何よりも演奏家に対してとても迷惑なことになりますので、悔しい気持ちは痛いほどわかりますが、来場を控えるのがマナーかと想いました。
全く素晴らしいピアノだっただけに・・・。それだけが、唯一残念だったですね。

本題に戻ります。

外山さんのこの日の演奏を聴いて、感じた言葉は、”素直”、”真っすぐ”、”一生懸命”というキーワードです。
確かにまだお若く、舞台経験もたくさんおありながら、本格的なデビューは今回のコンサートであった訳なので、
多少のぎこちなさとか、その“一生懸命さ”が見えすぎてしまうところもありましたが、
それもまた、外山さんの個性と言うか、演奏にプラスに働いていて、とても好感が持てました。
札幌出身の、このような大きな将来性を感じさせるピアニストさんが誕生したことは、本当に本当に嬉しい限りです。

演奏会後は恒例の?サイン会が行われ、(実はこのサイン会で、事務所側のガードの固さに少々辟易しましたが^^;)外山さんは、演奏後の疲れも見せず、笑顔で「どうもありがとうございました」と、ファンの方一人一人と応対していました。
演奏もそうですが、お人柄も”一生懸命””誠実”な方なのだなあと、それが良くわかりました。
いよいよ私とびびの番!ところがちょっとしたハプニングがありまして、それでタイミングをすっかり失ってしまい、私、何も言葉がかけられなかったんです!(T_T)(って言うか、繰り返しますがちょっとガード固すぎ)サインはこちらに



外山啓介 ショパン:ヒロイック

バッチリもらいましたけれど、ものすご〜く残念無念!
でも、そのかわりと言っては何ですが、びびが
「握手してください」と言って、外山さんが「あ、はい!」と気持ちよく右手を出してくださって、しっかりと握手してもらえました。偉い!よくやった、びび!(^^)v
びびはその後、ずうっとポ〜ッとしてて
「すごく手が大きかった〜。私の手が全部隠れちゃってたんだよ〜」と
何度も興奮気味で話してくれました。
その嬉しくてしょうがない、と言った様子を見ていたら、サイン会のガードの固さも(←しつこい)、それでできなかった言葉かけの悔しさも「まあ、いいか」と私も穏やかな気持ちに・・・。(^^)

さて、秋にはまたKitaraで、外山さんのランチタイムコンサートが行われることがわかりました。\(^o^)/
ショパンの他に、モーツァルト、フォーレ、ドビュッシーなどもプログラムにあり、
今から非常にワクワクします。
外山さんの、まだまだ知られていない未知なる魅力と、その後のご成長ぶりに、期待をしながら、じっくりとその日を待つことにいたしましょう♪(^^♪

posted by 乃琶 at 10:41| Comment(21) | TrackBack(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月26日

小川遥 〜Lumiere Mondiale〜 Piano Recital 2006.12.22

ogawaA4_A-20.jpg私の大事なお友達、パリで学ぶピアニスト、
小川遥さんの日本でのリサイタルに行ってきました。
会場は、鹿嶋勤労文化会館大ホール。
はい、遠路はるばる(笑)札幌から鹿島まで、
びびと二人行ってきましたよ♪


プログラムは以下の通り。

ハイドン:ピアノ・ソナタ変ホ長調 Hob.52
シューマン:クライスレリアーナ Op.16
メシアン:「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」より 10.喜びの聖霊のまなざし
15.幼子イエスの接吻
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第4番嬰ヘ長調 Op.30

●アンコール
モーツァルト(ウ゛ォロドス編曲):トルコ行進曲
リスト:ラ・カンパネラ

初めて訪れた鹿島、
宿泊先から会場までタクシーで「15分ほどです」と、ホテルのフロントの方に伺ったものの、
乗ったタクシーがなかなか着かず、ものすごい不安に襲われた私たち。^^;
やっと着いて、静岡からこれまた、遥さんのためなら!と駆けつけた
かもたぬきさん、子ガモちゃん、そしてお母様ともお会いし、
大いにホッとしたのは言うまでもありません。

すっかり落ち着いた私とびびは、ホール後方やや左寄りの席に着いて、じっと
主役の登場を待ちました。
会場が暗くなり、ステージがパッと明るくなると、とうとう遥さんが登場です。
とても綺麗な黄緑色のドレスで、まるで温かな春のような雰囲気に包まれた遥さんはすごくチャーミング!
私は、わ〜、本物の遥さんが、目の前に〜〜!と、もうはや感激。(笑)

さて、一曲目はハイドン。
遥さんは椅子に座り、丹念に高さを調節、ドレスの裾加減も
気になるようです。それが終わって、しばし精神集中。
最初と言うことで、とても緊張した面持ちでした。
しかし、鍵盤に手を置いて、最初の一音を弾いたときから、凄まじい集中力を発揮し、一気に私たちを曲の中へと引き込みました。

何と言いましょうか、最近、すごく清らかで美しすぎて、ペダルも多用し、およそハイドンらしくないハイドンも多い中、遥さんのハイドンはちゃんとハイドンらしい。
凛々しく、雄々しく、無骨で、スマートすぎない。そうすると今度はちょっとだれ気味になり田舎臭くもなりがちなんですが、和音のアルペジオをぴたりと決めるなど
要所要所をきっちりと締め、誠に品格ある演奏にしているのには感嘆しました。
なおも、遥さんは緊張しているのか、楽章の合間合間にもハンカチを手にしているのですが、けっして気持ちは途切れず、一曲としての繋がりをきちんとまとめあげていたのは、さすがとしか言い様がありません。

続いてクライスレリアーナ。
これ、初めて、私飽きずに最後まで聴けました。^^;
変奏曲でもなく小品集でもない、8曲が結集された、シューマンの傑作の一つでもありますが、それをどう弾き分け、どうまとめあげるか、考えるだに非常に難しい曲だと思います。
遥さん、かなり、一曲一曲をどう聴かせるか考え抜いたのではないでしょうか。
一番長い2曲目が、少々、曲の中で分かれちゃっていたかな?と思う他は、
非常に流れよく、スムーズに最後まで聴けました。
激しく暗い短調や、深く瞑想するような旋律、はたまた安らぎの長調、を繰り返し、
最後の交響曲第1番「春」の主題にも繋がるメロディが流れ出すと、
ああ、なんと、やっと報われたような、私の中に救いのような気持ちが生まれました。
とても清々しい、クライスレリアーナに拍手。

さて、休憩を挟んで、さあああ、メシアン!
前に遥さんの演奏をCDで聴いて、度肝を抜かれ、めちゃくちゃ感動した私は、
メシアンがこの日生で聴けることをとても楽しみにしていました。
私が最も好きな「喜びの聖霊・・・」ドドドドドッと、怒濤の左手オクターヴが始まったと思ったら、もう後は釘付けでしたね。
あの、一番好きな、右手が高音部になってミ、ファ、ラ、シ、ドレミ〜♪
ラ、ソ、ファ、ラ、ミレミ〜♪
から続く一連のところですが、
ただ綺麗なだけじゃないのです、すごいのね、響きが、音色が!
なんていうのかな、ただ単に澄んだとか真珠とか、そう言った音でもなく、
かといって、金属的な人工音でもなく、
輝きの音の上に、一枚ヴェールが被せられたようなそう言った音で、
それが本当に神々しくて、この世のものとは思えなくて、
もう、魂が震えて震えて止まらなくなっていました。
初めて、星たちのお喋りを生で聴いた気がして、感極まって私の目には涙が浮かんでいました。素晴らしかったです。

「幼子イエス・・・」は一転、音色がとても柔らかくなり、こちらは本当に
ただただ、安らか〜な気持ちになりました。
前から好きだった「幼子・・・」ですが、遥さんの演奏でいっそう好きになりました。いつか、遥さんに全曲弾いていただきたいと、切に希望します♪(^^♪

さて、とうとう最後のスクリャービン。
メシアンから、がらりと変わって、とってもとっても甘くて、ロマンティックで、華やか。遥さんが心から酔いしれて弾いているのがすごく伝わってきました。

渾身の演奏に、会場からはブラウ゛ォ!の声と拍手が・・・。
私もびびももちろん、「ブラウ゛ォ」って叫んだんですが、遥さんに届いていたかしら?(^^ゞ
鳴り止まない拍手に、遥さんが応えてくれた一曲目は、なんとあの、
ウ゛ォロドスのトルコマーチです!!
もう、絶句!!今まで録音やTVとかで聴いたことはありましたが、この超絶技巧曲を生で観ると迫力が全然違います。
うっわ〜、すんごい派手ですんごい楽しい曲ですねえ!
遥さんの底力と、エンターテイナーぶりに感激、感服しました。

そうしたら、次はなんと、ラ・カンパネラ!(@_@)
私とびびはもう、嬉しくてキャーキャーです。^^;
遥さんが全身全霊で弾かれたカンパネラ、なんて綺麗な曲なんでしょうね!
なかでも、高音部で奏でられる鐘の音が超絶に美しく、
これまたウルウルになりました。

素敵でした!真面目に、私の予想を遥かに超えた素晴らしい演奏でした!
サイトやメールで長い間やり取りし、私は彼女の
真っすぐで、思いやりがあって、でもけっして媚びを売ったりせず、自分の意見をちゃんと持って、誰に対しても凛とした姿勢を崩さない、というところが
大好きなのですが、
まさに演奏にもそう言ったらしさ、言わば遥さんの生き様ぶりが
現れていたと思います。

遥さんとは、3年半以上のお付き合いをさせていただいていますが、
今回、ついに念願叶い、彼女の生の演奏を聴くだけではなく、遥かさんご自身ともお会いすることができ、(これがまた、お話しすると実に輪をかけてチャーミング♪)
感無量でした。
今年思わぬ手術を受けたり、諸事情でピアノから離れてしまった私を、
最後の最後で、こんなご褒美が待っていたなんて、
本当に、遥さんにただただ、感謝の気持ちでいっぱいです。

遥さん、ご家族のみなさま、そしてスタッフの方々、
この機会を与えてくださいまして、どうもありがとうございました。

遥ちゃん、いつの日か、またお会いしましょうね♪(^^♪

小川遥さん公式サイト→Lumiere Mondiale-リュミエールモンディアル



ラベル:ピアノ 小川遥
posted by 乃琶 at 21:37| Comment(4) | TrackBack(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月30日

小山実稚恵リサイタルシリーズ〈音の旅〉第2回 深緑:思いやりと深い強さ〜献呈 2006.11.29

心待ちにしていた、小山実稚恵さんの〈音の旅〉シリーズ、第2回に行って来ました。
朝から雨になったり、雪になったりと落ち着かないお天気の札幌でしたが、コンサートが始まる頃はすっかり止み、空の月やKitaraのイルミネーションがとても綺麗でした。
今年はシューマンが没後150年と言うことで、
この第2回はシューマンに焦点を当てて、シューマンと彼に深く関わった作曲家の作品でプログラムが組まれていました。

kitara1436.jpgkitara1438.jpg

メンデルスゾーン:無言歌集より
「甘い思い出」ホ長調 op.19-1
「デュエット」変イ長調 op.38-6
「ヴェニスの舟歌」嬰へ短調 op.30-6
「失われた幻想」嬰へ短調 op.67-2
「失われた幸福」ハ短調 op.38-2
「紡ぎ歌」ハ長調 op.67-4
「5月のそよ風」ト長調 op.62-1
シューマン:ソナタ第2番 ト短調 op.22
シューマン=リスト:献呈(ミルテの花 第1曲)
リスト:ソナタロ短調

●アンコール
クララ・シューマン:ロベルト・シューマンの主題による変奏曲 op.20より主題と第1変奏
リスト:ラ・カンパネラ
リスト:愛の夢第3番

今回の小山さんの衣装は、テーマでもある「深緑」のドレス。首元は空いておらず、
首から脇にかけて大胆なカットが、すごく大人っぽくて小山さんのエレガントな雰囲気をいっそう魅力的なものにしています。

いつものように小山さんは笑顔で登場し、軽く会釈して
まずメンデルスゾーンから。
余談ですがこの「無言歌集」、実は私、中学生の頃勉強していたことがあり、
今日のプログラムの曲も何曲が弾いたことがあるのです。
そんな理由も手伝い、とても懐かしく聴きました。
最初の”甘い思い出”、小山さんの音はどこまでも優しいのだけどけっして甘ったるくなくて(笑)とても清々しい。
”デュエット”、これは今でも弾くことがあるほど、無言歌集のなかで大好きな曲ですが、
小山さんの手にかかると、ああ、そうだったのか、こんな風に”二人”はお喋りしていたのね、とすごく納得できるんですね。畳み掛ける二つの声が徐々に解け合い、デュエットになるとき、しみじみ名曲だなあと感動を新たにしました。
”ヴェニスの舟歌”、これは一番有名ですよね。重々しく悲しげなメロディの中にも、はっきりとした意志が感じられる演奏、そこから続く短調2曲は感傷的になったと思いきや、紡ぎ歌でくるくる回る、軽快な楽しさに心が浮き立ち、”5月のそよ風”でまた、心が洗われてなんともスッキリとした気分に。
最後の曲はクララ・シューマンに献呈された曲と言うことで、なるほど!こうして〈音の旅〉第2回の幕が開けました。(^^)

続いて本家本元?シューマンの「ソナタ第2番」へ。
この曲、今大人気の漫画”のだめカンタービレ”で登場したときに、
どんな曲なんだろう?とCD探しまわったことがあります。
第1楽章は激しいなかにシューマンの狂おしいほどのクララへの愛が感じられる、ちょっと破滅的な旋律。小山さんは躊躇することなく、雄々しく、そして切々とシューマンの心を表現して行きます。第2楽章では、がらっと変わり、しみじみとしたメロディをまろやかな音色で歌い上げて行きます。
そう、ここでまず感じたのですが、小山さんの弱い音って、以前よりもいっそうまろやかで包み込むような響きになっていますね。ちょっとくぐもったようでいて、それがとても温かいのです。ホッとして聴き入ったあとに、3、4楽章の再びシューマンの心の動揺と言うか、焦りや戦きが押し寄せて来ました。
シューマンのやり場のない感情のひだを小山さんは交互に現れる細かく素早いパッセージで的確に代弁し、そして華々しいクライマックスへ。

私とびびは今回、前から5列目のやや左寄りと言う絶好の席で見ていたのですが、小山さんの指や腕だけではなく、身体全体の使い方にも目が釘付けになっていました。
小山さんの持ち味の一つでもある力強い音、ダイナミックな音を出すときの、腕の筋肉の張り、そして今回大注目の柔らかな音、温もりに満ちた音を奏でているときの、指から肩にかけてのしなやかさ・・・。
一流の演奏家は、弾き姿も美しいですが、惚れ惚れと見とれてしまうほどでした。

休憩を挟んで後半の一曲目は「献呈」。
この曲は、ファンが多いですよね。真面目に、シューマンの愛の告白の歌なので、結婚式などで弾かれることも多いです。
そう言う曲なので、けっこうべったり甘甘で^^;弾かれがちだったりするのですが、
小山さんはあくまでも前へ、前へ、と進んで行く演奏。少しテンポが速く、どちらかと言うと出だしは淡々と、そして徐々に感情の高まりを見せて行きます。誠実で真っすぐなシューマンの心情を見事に表していると思いました。

そして、とうとう最後の目玉でもあります、
リストの「ロ短調ソナタ」です。
ソナタと言っても、30分連続して弾かれる一曲の大曲。
山場がてんこ盛りだし、まとまりに欠けるような気がして、昔は何度聴いても好きになれませんでした。それがあるときから、いいなと思えるようになり、ある時期、繰り返し聴き入っていたこともあります。リストのロ短調ソナタは私にとって、かなりいろいろあった?(笑)だけに思い入れも大変深い曲です。
これだけ聴く側の心を千々乱れさせるソナタは、過去にワーグナー派には大絶賛され、ブラームス派には酷評されたと言う曰く付き。ドシロウトである私が大いに振り回されたのも実に納得がいきますよね。

そんなエピソードを抜きにしても、真面目にこの曲を弾ききるのは至難の業だと思います。
それまでと打って変わって、小山さんの表情もきりっと引き締まり、会場にピン!とした緊張感が張りつめます。
身体をものすごく鍵盤に寄り添うようにして、sotto voceの出だし、
ソ!・・・・ソ!・・・・と言う四分音符を慎重に、そして威厳を持って弾き始めると、緊張はピークに達しました。ちょっと不安げなあの主題が現れ、小山さんは私たち聴衆の心をぐっと引っ張って、壮大なドラマのなかへ一気に引き込みました。
ここに来て、強音はさらに冴え渡る一方、失礼ながら、あの目の前の可憐な方が弾いているとはとても思えないほどのダイナミックさとド迫力でぐんぐん迫って来ます。わ〜、ピアノ割れるんじゃないかと思うほどの、でも音自体はヒステリックにも割れ声にもならない、ただただ、目を見張るばかりの豪音になって、微動だにできない私たちにこれでもかと押し寄せます。すごい、すごい、すごい・・・私にはそれしか言葉がありません・・・。
めまぐるしいパッセージと華々しいオクターヴの応酬に心を奪われているとあのラ、ラーラ、ラーーシシー、レ、レーレ、レーーミミーという
Grandiosoさながらの雄々しく悠々とした第二主題が始まりました。
それまでの緊張が一気に解き放たれ、私は感極まって、何と涙が出て来て止まらなくなりました!??
こんなことは初めてです。魂を揺さぶられるとはまさにこのこと、リストのソナタで私は初めて泣きました。

そのあとも、小山さんは目が覚めるようなきらびやかな超絶技巧で華やかさを存分に打ち出すと、その合間に現れる安堵の表情、その対比も実に鮮やかに弾きこなしていきました。山場が何度もあるのですが、けっしてどれも同じような盛り上げ方ではなく、ppp〜fffの巧みな弾き分け、単なる強弱にとどまらず、エネルギーや緊張感の緩急のメリハリまで考え抜かれた抜群の構成力で、このスケールの大きいドラマを見事に魅せてくれました。様々なストーリーを経て、ついにcodaへ。小山さんは冒頭のフレーズを厳かに再現すると、静かに静かに、まるで別れを惜しむかのように、最後のpppを弾いて幕を閉じました。

一瞬、場内は水を打ったようにシーンと静まり返りました。

そして、万雷の拍手です。
「ブラウ゛ォ!」私とびびは迷わず叫んでいました。私は感動しまくってやっぱり、目がウルウル状態のままです。(T_T)

もうもう、もう、ものすごく素晴らしかったです!!!!
いい!!!すごくいい!
リストのソナタ、今までいろいろな人のを聴いて来ましたが、昨日のこの演奏会での小山さんのが一番良かった!最高でした!!
今回、この演奏に出会えたことは、なんと、なんと幸せなことでしょうか!
その感激がいっそう拍手を強めていました。私も、びびも、他のお客さんたちもきっと同じ想いでいたに違いありません。

弾き終わって少し放心状態の小山さんでしたが、でもすぐさま立ち上がって正面を向くとにこっと微笑みながらお辞儀をしました。その表情にはさすがに疲れも見えましたが、大きな仕事を成し遂げたという、達成感も感じられ、そんな小山さんに私たちは惜しみない拍手を送り続けていました。

それに応えて小山さんはアンコールは三曲も弾いてくれました。
優美なクララ・シューマンの曲で興奮した私たちの熱をいったん冷まさせると、次はなんと、ラ・カンパネラ!ちょっと疲れのせいか精彩を欠くところもあったのですが、もうクリスタルのような輝きを放った鐘の音の超絶なな美しさに、私はもうのけぞってしまいました。
そして、最後にこれまた甘やかに、気品溢れる愛の夢を奏でて、にこやかに爽やかに小山さんは舞台を去って行きました。ああ、本当に美しかった、ありがとう、小山さん。

演奏会終了後には、いつものようにサイン会もありました。なんと、私とびびが列のトップに!(@_@)
そこへ、全く時間を置かずに小山さんがいらっしゃったのです。今日は本当に渾身の演奏続きで、疲れていない方がおかしいのですが、そんな状態にも関わらず、相変わらずにこやかに気さくに私やびびに接してくれました。

私はリストのロ短調ソナタの感動をそのままお伝えし、今月の22日に発売されたばかりの二枚のCD、



小山実稚恵 シューベルト:さすらい人幻想曲



小山実稚恵:ベスト・アルバム ゴールドディスク仕様

にサインをしていただきました。
びびは、もう今は販売されていない貴重なCD、
小山実稚恵 アンコールにサインをいただき、
「どうしたら、そんなに指が回るんですか?」と言う質問をしました。小山さんはちょっと困ったような顏をし、結局スタッフの方が「練習だね」と言って、その場は笑いに包まれました。
でもすぐに「今、何かやっているの?」と小山さんがびびに尋ねられ、「ショパンの7番のワルツをやっています」と答えると、たちまち破顔して、「がんばってね」と言ってくださいました。(^^)v

大感激と大感動と、大興奮と・・・。またまた小山さんからたくさんのプレゼントをもらった私とびびは、寒さも何のその、(笑)音楽が人を勇気づける、幸せにすると言うのを心底感じながら、家路に着きました。

今回のリサイタルのテーマ色は「深緑」でした。爽やかな小品と、重厚な大曲との組み合わせ、単なる緑ではなく、コクや深みと言った色合いを、そう言った曲の組み合わせで表現していたのです。そうだったのか、とプログラムに込められた小山さんの熱い想いも、あとになってようやくわかりました。
昨日、すでに先行販売でチケットを購入した第3回目の〈音の旅〉は来年6月20日、
テーマ色は「萌黄色」です。今からとても楽しみです。

小山さん、今度はどのような〈音の旅〉に誘ってくれるのでしょうか♪(^^♪
posted by 乃琶 at 13:50| Comment(12) | TrackBack(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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