
札響の第498回定期演奏会に行って来ました。
場所は札幌コンサートホールKitara。
演目は以下の通り。
指揮/広上淳一
ピアノ/小菅優
管弦楽/札幌交響楽団
ヴェルディ:歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調Op.58
ベルリオーズ:幻想交響曲Op.14
●シベリウス:樅の木(ピアノ独奏)
三日前に同じ場所で行われました、外山啓介さんの衝撃デビューリサイタルの余韻も冷めやらぬまま、これまた私がもう、五年ぐらい前から待ちに待ち焦がれていた、小菅優さんの初めての生を聴く、と言うことでテンションは上がりっ放しでした。
今回の席は、舞台の真後ろ、はい、パイプオルガンのほぼ前です。
札響ではかつて、
イッサーリスのときにこの位置に座ったことがありますが、指揮者の表情や動作、そして各楽器の譜面がよく見えて、なかなか面白いのです。今回のお目当てはもちろん小菅さんですが、いつもピアニストを右側からしか見ないこと多いので、左から見たらどんな風かなあ?というのも興味津々でした。
開演時間となり、お客さんたちがめいめいの席につくと、間もなく、オケの方達がぞろぞろと舞台に登場し、音を出し始めます。
私はこの瞬間がたまらなく好き。「さあ、楽しい音楽の時間です」とは、
”のだめカンタービレ”のセリフですが、まさにその言葉通りで、とっても胸が高鳴ります。
さて、コンマスの伊藤さんの指示でチューニングが終了すると、いよいよ指揮者の広上さんが登場。最初は「シチリア島の夕べの祈り 序曲」。
オープニングに相応しく、華やかで心が浮き立つような曲でした。
広上さんの指揮は初めて拝見しましたが、まるで踊るように振る方ですね〜。
そして、いっぱい声を出される♪なかなか個性的で、ちょっと目が離せない感じです。
そしていよいよ、小菅優さんへと続きます。
ここで、ピアノを入れたり、オケ編成変更のため、舞台の上では大掛かりな配置換えが。
ピアノと椅子や譜面台の位置が落ち着くと、再びオケの方々が登場。
おお!ベートーヴェンの4番ピアノコンチェルトは、弦はコントラバスがいない!!金管はホルンはいるけれど、トランペット(コルネット?)は一人、それだけで他の金管はいないんですね〜!
そう言うのも、生で観てみないと、実感し得ないことで、いや、やっぱりオケは観るのもとても面白いです。
会場が暗くなり、水を打ったように静まり返りました。そこへ広上さん、続いて小菅さん登場!おお!私が、録画して何度も繰り返し観ている「情熱大陸」などでもおなじみの(全く同じかどうかはわかりませんが)深紅のドレスです。
豊かな黒い髪を揺らしながら、にこやかに答礼するとピアノの前に座りました。
「ベートーヴェンピアノ協奏曲第4番」。
この曲は、ピアノのソロで始まりますが、その手法は当時は掟破りで画期的なことであったらしいです。
とても静かに、しかし尋常ではない深い抒情を讃えた最初の音を聴いたときから、もうその瞬間、ぐぐ〜〜っと、ものすごい引力で引き込まれてしまいました!
いや、それは私だけではありません。会場のお客さんの誰も彼もが・・・。
いや〜、この4番コンチェルトは、気品溢れる精緻な曲想が特長ですが、小菅さんのピアノは気高さの極み。
細かいパッセージの正確さ、目を見張るほどの指さばきからは、非常にクリアでブリリアントな音がコロコロとこぼれ落ちて行きます。
もちろん、ゆったりとしたところでは、どこまでも伸びるふくよかな音で、大変気持ちがよい。この曲の高貴な香りをいっそう高めて行きます。
音色や音楽表現の素晴らしさは、言わずもがななのですが、私がここでまず強烈に感じたのは、小菅さんの圧倒的な存在感と安定感でした。
もうね、見ていて何の心配もいらないの。(笑)すごくすごく、安心していられるのです。本当に、まさに極楽浄土のような安らぎを感じました。
おのおのの曲想に合わせて、変化する小菅さんの表情もとてもいいです。
優しく、ささやくようなところでは、心から慈しむような微笑みで、激しく雄々しいところでは、眉間に皺を寄せて^^;、思いっきり苦悩の表情を浮かべます。
曲の語り部のような、見事な表情にも魅了され、私はよりいっそう、小菅ワールドに没入。
小菅さんは良く指揮者とオケの方も見ます。本当に良く見る!これは、真後ろの席を取ったために、今回良〜くわかった収穫の一つですが、
特に広上さんとは、二人で頭を突き合わさんばかり。このせいか、ドンピシャのタイミングで要所要所も決め、またオケの方との掛け合いも、抜群のコンビネーションを産み出していました。
やはり、ここだ!というポイントが決まると曲がものすごく締まり、それが曲の品格にも繋がりますね。そしてそう言う決め所が巧く行くと、演奏者の方もますます乗っても行きますし、音楽が生き生きと流れていきます。
広上さんの所作もさらに流麗に、そして歌声?かけ声?もまるで音楽の一つの様に
同化してますます奥行きのある世界を展開していました。
さあ、何と言っても、一番の聴き所はコンチェルトの最大の山場と言うべき、1楽章と3楽章のカデンツァでしょう。
貫禄充分に(ちょっと中村紘子先生を彷彿させる(^^ゞ)、華麗な技巧と並外れた音楽性で、まさに小菅優の本領発揮!鍵盤の上でこそ、自由自在に感情を表せる、と言うことをまざまざと見せつけてくれました。
しばし、周りにオケが存在していることすら忘れるような、小菅さんの独壇場。
本当に本当にただただ、溜息が漏れるだけ、言葉にならないほどの見事なカデンツァでした。
終楽章の、メリハリのあるメロディを軽快に弾き進めて行く小菅さんのピアノはいよいよ冴え渡って行きます。曲に没頭し、その世界を心から楽しいんでいる小菅さん、広上さん、オケとともに、お客さんも一緒に楽しんでいます。
ホール一体が一つになって、何とも言えない興奮状態を私も味わっていました。
最後のフィナーレも、ばっちりとオケと合って、コンチェルト終演です!!
「ブラヴォ!」私も叫んでいました。もう、四方八方からブラヴォの嵐です。
小菅さんはまず広上さんと、次にコンマスの伊藤さんと握手、続いてハグしていました。
わ〜、素敵♪やっぱり外国流っていうか、この人はもう根っから身に付いているんですね〜。(^^)
満面の笑みで小菅さんは答礼。もう、拍手は全然止まないんです。カーテンコールで何回答えたかな?3回目ぐらいのときに、嬉しいサプライズが!?なんと、小菅さんがピアノに座り、アンコールをしてくださったのです!?\(◎o◎)/!
弾いてすぐに「わ〜、樅の木だ〜」とわかりました。大好きな曲でしたから。
もう、これもなんて切々と訴えてくるのでしょうか。ちょっとシャンソンっぽい旋律が
小菅さんの手にかかるとさらに哀愁とロマンを帯びて、もう泣けそう・・・。
改めていい曲だな〜、と感じました。
さて、休憩後は「幻想交響曲」。オケも大編成になり、曲は全5楽章からなり、まさに総力戦と言った趣です。
この曲は、一応知ってはいますが、詳しくもなく^^;、プログラムの解説でそのストーリィを知りました。
大意は「病的な感受性と激しい想像力をもった若い芸術家が、恋の絶望に耐えかねてアヘン自殺を図る。しかし致死量に達しなくて死にきれず、奇怪で幻想的な夢を見る。恋する女性は一つのメロディとなって現れる」だそうで、まるで歌劇の様にワクワクしながら聴きました。
変化に富んだメロディや曲想も去ることながら、この曲でとても面白かったのは、楽器の使われ方です。
様々な楽器がソロを奏でるのですが、例えばオーボエのソロとクラリネットのソロの掛け合い。これが、ただ普通の掛け合いではなく、オーボエは普通に舞台上にいるのですが、クラリネットは、二階客席の右前方に。まるでこの世とあの世の語り合いの様に、何とも不思議な気持ちになりました。
また、ヴァイオリンの音程には関係なく、弦をこすり合わせるだけのような奏法は、
(何と言う奏法なのでしょう?)今まで見たことがなかったので、びびと二人で目を丸くしてしまいました。
ワルツのときの、ハープ二台の優雅な響きにうっとりとしたり、ファゴットの素早い動きに感嘆したり、いろいろありましたが、極めつけは終楽章の鐘の音。
広上さんが、手を高く上げて指図した途端、後ろから「ゴ〜〜〜ン」と言う音が・・・。
振り返ると、パイプオルガンの前に二つの鐘があり、それが交互に厳かな音色を放っていたのです。鐘はいつの間に?^^;
終楽章は「魔女の宴」の場面、死んだ主人公のさまよう魂を弔う鐘なのでしょうか?
とても効果的で、神秘的で、これこそ「幻想」!!と想いましたが、もろ真後ろからの鐘ってすごく頭に(脳天に)響くんですよね。それだけがちょっと・・・。^^;
最後は狂乱のフィナーレのごとく、オケは総動員で超盛り上がりを見せ、広上さんの一振りでこの壮大で斬新なスケールに満ちた交響曲は幕を閉じました。
これまた、ブラヴォの嵐、拍手喝采です。広上さん、そしてオケの方々が何度も答礼をし、カーテンコールにも応えましたが、アンコールはありませんでした。
いえ、もう全力投球、完全燃焼だったと言うことで、私もびびも含めお客さんたちは充分に納得です。
当たり前ですが、小菅さんのサイン会もなく^^;、(でも私は
すでにサインを持っているのでいいんです♪)でもでもみんないい顏をして帰って行くのを見ますと、どのお客さんもこの演奏会に大満足だったんだなと言うのが良〜くわかりました。
出口付近には、今、熱演を繰り広げてくれた札響の方々が「ありがとうございました」と言って、お客さんたち一人一人に頭を下げていました。
前回の札響定期のときも、このようだったのですが、これはプロオケの演奏会ではとても珍しいことではないでしょうか?
やはり、地元に根付いた”札響”ということで、地元のお客様を大切にしようと言う意識なのでしょうが、こうしてくださるとやはり親しみも湧きますし、また聴きに来よう!と思いますね。(^^)そして小菅さんのピアノも・・・。
私は小菅優さんのピアノ独奏のCDは全部持っているのですが、協奏曲だけは持っていなかったんです。でも、今回の演奏を聴いて、俄然欲しくなってしまいました。
小菅優 モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番
って、モーツァルトなんですけどね。^^;
と・・・今検索したら、こちらを発見!!
小菅優 ファンタジー
なんと新譜が出るんですね!これも絶対に買います!!(^^♪
と言うことで、私はこれから「幻想交響曲」を聴こうかな。(笑)
私のコレクションの「クラシック芸術の遺産」の中からの一枚ですが、
録音は
ベルリオーズ:幻想交響曲[1945年録音]〜モントゥー&サンフランシスコ響名演集
こちらと同じものです。
いや〜、やっぱりオケは抜群に楽しいですね!!
でもって、やっぱり小菅さんは超すごい!!